マイナスの創造力。
グロそうなので見なかったのですが、正月に貯めておいた1話~11話を一気に視聴したので感想書きます。
いやあ、グロかったですねえ。
バラバラどころか細切れにして下水に流すとか、果てはプラスティネーションとか。
元々グロやスプラッタは苦手です。
特に実際にあった猟奇事件じゃなくて映画とかフィクションの方がダメ。
何というか、制作したスタッフの思考が怖い。
だってああいう作品って「人間を如何に残酷に殺すか」って事を一生懸命考えた結果なわけです。
実際のグロシーンよりもそういう「マイナスの創造力」が背筋が寒くなるほど怖いんです。
未来モノは好き。
一方で将来こうなるのでは、と想像した未来を舞台にした作品は大好き。
現代モノや過去モノよりも、未来モノは人間の創造力が最大限に発揮されるから。
つまりこの「PSYCHO-PASS」は私の大好きなものと大嫌いなものが綯い交ぜになっている。
見たいけど見たくない。
その昔「コマンドーが見たかったけど同時上映のバタリアンが怖くて見れなかった」様なジレンマを感じる作品です。コマンドーだけみればいいじゃん、というアナタ。
ごもっともですが私は貧乏性なんです。
お金払ったら全部見ずには居られないんで。
マイノリティ・リポート。
このアニメを見て最初にイメージしたのはこの映画。
プリコグと呼ばれる予知能力者を駆使して「将来犯罪者になる人」を割り出して実行前に逮捕する事が当たり前になった近未来。
トム・クルーズ演じる主人公はその執行官だったのですが、ある日自分に犯罪者予告が出てしまう、という話です。
多分このアニメの元ネタ・参考になってるんじゃないでしょうか。
但しPSYCHO-PASSでは予知能力者じゃなくてシビュラシステムと呼ばれるコンピュータが常に人間の「精神汚染度」PSYCHO-PASSを計る仕組みになっています。
その犯罪係数が一定の数値を超えると「潜在犯=潜在的な犯罪者」と認定され逮捕。
更に係数が基準値を大幅に上回ると即処刑される。
執行官にはこのPSYCHO-PASSに連動した特別な銃・ドミネーターが供与されている。
場合に応じて麻痺銃になったり処刑銃になったりという一見便利なものです。
でも起動が遅い。
銃を手に取ると音声ガイド(指向性音声なので本人しか聞こえない)で認証から始まる。
登録した人しか撃てないという「スマートガン」の要素が入っています。
その為直ぐ撃ちたくてもなかなか起動しないでピンチに陥ることもしばしば。
これが弱点といえば弱点ですね。
ミイラ取りがミイラになる。
犯罪に巻き込まれた人は犯罪係数が上昇しやすい。
それは数多くの犯罪に直面する刑事も同じ。
実はこの時代の刑事には二種類存在します。
・直接犯罪者と向い合って逮捕もしくは退治する「執行官」。
・その執行官を指揮して前線に出ることはあまり無い「監視官」。
常森朱(つねもり・あかね)は新人ながら執行官を指揮する上司・監視官として着任します。
そして執行官は全員潜在犯。
つまり本来裁かれる身分なのですが、毒には毒をの理屈で汚れ役を負わされている。
無論逃亡や反抗をしようものなら監視官によって即逮捕・処刑される身分。
いわば背中に銃つきつけられて戦争やってる兵士みたいなもんです。
この執行官=潜在犯なんですが、刑事や執行官出身者も居る。
彼らは犯罪者や犯罪現場に飲まれてしまった人たちという訳です。
監視官と執行官に分けているのも、監視官の潜在犯化を防ぐためだった。
曽祖父を思い出した。
犯罪者に接し過ぎると精神をやられる。
個人的な話ですが、警官だった私の曽祖父の事を思い出しました。
因みに親から聞いた話であり、私が生まれる前に死んでいるので直に会ったことはありません。
元軍人であり、刑事部長や警察署長まで務めた曽祖父。
しかし警察をやめた後、ド田舎に土地を買って半ば引きこもってしまう。
曰く「悪人を見すぎて人間が嫌になった」んだそうです。
激動の明治生まれ(或いはその前かも)で元々は軍人。
精神的にかなりタフな人物だったと思います。
しかしそんな祖父でも長年犯罪者や犯罪現場に接し続けるのはキツかった。
それだけに刑事が潜在犯に堕ちてしまう、というのは納得ですね。
システムの穴。
劇中には単なる精神的脆さから潜在犯に落ちたもの。
更に快楽殺人者みたいなシリアル・サイコキラーまで様々な人物が出てきます。
しかし作中の黒幕として、彼らに「犯罪指南」をするコーディネイターの存在が明らかになってくる。
人を殺したがっている人物に銃を与える。
ネット犯罪したがっている人物に違法プログラムを供与。
彼自身は殆んど手を下すことがありません。
犯罪という目的がある人物に、手段を与えるだけ。
執行官・狡噛慎也(こうがみ・しんや)の妄想に過ぎないと思われたこの人物が実在することが分かってくる。
やがてこの犯罪コーディネイター・槙島聖護(まきしま・しょうご)を追い詰めるのですが…ドミネーターが作動しない。
シビュラシステム上彼がどんなに犯罪を犯してもPSYCHO-PASSは正常のまま。
それどころか被害者を傷つければ傷つけるほど係数が下がっていくというなんじゃこりゃ状態。
北斗神拳が通じなかったサウザーみたい。
悪人だけを裁くドミネーターが完全に無用の長物と化してしまう。
そうなるとこの時代の刑事には悪人を止める手立てが無いんですね。
友達が殺されそうなのにドミネーターは沈黙。
常森朱は友人を人質に取られながら全くの無力。
止めろといって聞く相手ではありません。
構えたドミネーターは文鎮と化しています。
そして遂に何の罪もない友人が、自分の巻き添えで、手も足も出ない自分の目の前で殺されてしまう。ここらへんの演出は見事でした。
そして次に考えるのが「こんな場面見せられたら、常森朱も潜在犯化しちゃうんじゃなかろうか」というもの。
果たして彼女は大丈夫か、というところで第12話に続きます。
面白い、けどグロい。
特に後半からどんどん面白くなっていったという印象です。
食わず嫌い、或いは最初の数話で見るのを辞めてしまった人は見直してはどうでしょうか。
でもバラバラ殺人やプラスティネーション&町中に展示、は気持ち悪かった。
これが自分以上にダメな人にはお勧め出来ません。
結末が気になるので続きも見ると思いますが、多分また纏めての感想になると思います。
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