幻書の出来るまで。
途中までただの過去話かと思ってました。
婦警さんの回でチラっと見えた眼帯書架「ラジエル」が出てくるまでは。
今回は幻書がどうやって作られるのか、という秘密に迫るお話です。
第一次世界大戦の頃、ヒューイが軍でパイロットをやっていた時代。
当時のヒューイはかなりのツッパリ。
上官に敬語も使わず「戦場に出れば俺はスグにエースだ」と大言壮語を吐く若造。
確かに腕は立つみたいですが、営倉行きの常習犯になりそうな感じです。
しかしそんな彼を理解してくれる上官が居た。
このアイラスという人物とヒューイは意気投合するのですが、やがて彼は敵のドイツ軍に寝返ってしまう。
そして嘗ての仲間を無慈悲に撃墜していく最強の敵「フェイスレス・ファントム」となってしまった。
この時点で何で祖国を裏切ったのか、理由は全く分からなかったです。
無敵だけど、戦場が無いと生きていけない。
アイラスは飛び方を見ていれば相手の考えが分かるんだそうです。
それってドッグファイトじゃ誰も勝てない超能力持ちって事。
将に最強のパイロットじゃないですか。
更に彼は戦場の声が聞こえるらしく、これを書き留めてポエムを作っていた。
そこに接触してきたのがラジエルです。
幻書とは、人の狂気や恐怖など強い感情が込められた本が変化して出来る。
アイラスのポエムが幻書になる可能性があるから近づいて来たと。
アイラスが亡命した理由は恐らく戦場を求めたからでしょうね。
戦って、ポエムを書かないと正気じゃ居られない。
だからより激しい闘い・多くの戦場を得られるドイツ軍に身を投じたと。
難儀な性格です。そしていかにも幻書が書けそうな人物ですね。
因みに当時の戦争は第一次世界大戦です。
ドイツ軍といってもナチスは関係ありません。
のちの総統も志願兵の伍長として戦場を駆け回っていた時期ですね。
ポエム戦争。
前述の通り、アイラスは航空戦では無敵です。
相手の心が読める以上、普通にやっても勝てません。
かつて相対したヒューイが逃げおおせたのは、たまたま操縦桿を離して意図しない動きを取ったから。
まともに戦ってもまぐれは二度も続かないのにどうするか。
実はヒューイもポエムを書いていた。
これの読み合いで心乱れたところを一斉射。
アイラスの邪魔はしないんじゃなかったのか。
そう言いながら引き金を引いたヒューイもよく分かりませんね。
墜落したアイラスですが、燃え盛る飛行機の中で全くの無傷。
まるでターミネーターの様な不死身っぷり。
それもその筈、実はアイラスは砲撃で既に死んでいた。
幻書欲しさにラジエルの詠み手である「教授」が魔術で生き返らせたものでした。
幻書を書けない死人に用は無い。
ポエムを失ったことでアイラスは見限られ、術を解かれて消えていく。
ヒューイやハルとも違う、情とか人命尊重とは無縁の幻書を第一に考えるタイプ。
いずれ敵としてヒューイの前に立ちふさがりそうな人物ですね。
いっぽうのヒューイは当時幻書のことは何も分からなかった。
なのにその片鱗は見せていたというところで次回です。
三枚羽の複葉機。
アイラスがドイツ軍機が三枚羽ですごく珍しかった。
調べた所「フォッカーDr.I」というタイプの様です。
レッドバロンと呼ばれたドイツの撃墜王「マンフレート・フォン・リヒトホーフェン」も乗っていたみたいです。
真っ赤な飛行機に乗った彼は、機動戦士ガンダムのキャラクター「赤い彗星のシャア」のモデルでもあると言われています。自分が知らなかっただけで、結構有名な機体だった様です。
プロペラ同調装置はもうあった。
更にマニアックな軍事ネタですが、胴体に付けた機銃がプロペラを撃ち抜かないようにする「プロペラ同調装置」というのがあります。要するにプロペラの回転数と機銃の発射速度を同調させて、回転するプロペラの隙間から弾丸を繰り出すようにした装置です。
ヒューイとアイラスの機体にはコクピットに機銃が付いています。
同調装置がないと自分でプロペラを撃ちぬいてしまう。しかし当時そんな機械があったのか。
それまではプロペラを撃ち抜かないように機銃を主翼などに付けていたのですが、命中精度が悪いのと弾が詰まっても解消できないのが難点でした。そこでプロペラを強化して「弾が当たっても大丈夫」にした上で胴体に機銃を付けた機体もありました。1915年にプロペラ同調装置がドイツで発明され、ドイツ軍は圧倒的に優位となりました。
その後イギリスでも採用されたので、時系列的に無理のない設定になっています。
次回はダンタリアンの書架 第12話(終) 『まだ見ぬ明日の詩』です。
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